美人にしか許されない仕事に応募する毒島

自分は容姿が残念な人間だと思う。

容姿だけではない。

スタイルも悪いし、肌質も残念だし、髪の毛に至るまで終わっている。

ファッションセンスもない。

声も何か汚い。

 

何かしら外側の要素で勝負出来そうなものなど何一つ持ち合わせていない非常に残念な人種だ。

そのことについて自覚はある。

友達と店に入ったのに店員が友達にだけ話しかけるだとか、親戚連中の姉への評価は「きれいになったねー」なのに対して私の場合は大体「変わらないねー」だとか、(この場合の変わらない、は、いつまでたっても垢抜けないね、をオブラートに包んでいる)

 

様々な苦々しい経験を通して自分の容姿が残念なことは認知しているので今更どうでもいいのだけれど、

何をとちくるったのか数年前、商業施設とオフィスタワーを兼ね備えたとんでもなくお洒落な超高層ビルの受付職に応募したことがある。

今考えればよく分かる。そういう仕事は美人であるか、スタイルが良いか、声が聞いていて心地良いだとか、愛嬌があるとか、そういうことで他人をいい気分にすることの出きる人がする仕事なのだと。

 

なにも考えず応募し、そしてなぜか受かってしまった。

 

意気揚々と挑んだものの、早々に自分の愚行を思いしる。

そこには本当に美しい人しかいなかった。

 

同期が一人いたが彼女もまぁ美しかった。

二人で言葉遣い等の研修を受けたが、私だけなぜかメイクレッスン講座が入っていた。

なぜもくそもないと思うが。

 

一応自分なりに化粧をしてきたのに、「ここではメイクもおもてなしの一つだからね。」と言われた。

 

先輩が化粧をしながら、丁寧に説明してくれた。

私が朝塗ってきたファンデーションのうえに更にファンデーションを重ね、アイシャドウを施し、チークも塗ってくれた。

正直嫌な予感はしていた。

案の定、仕上がりはとんでもないことになっていた。

ファンデーションの色が全然合ってない上に毛穴という毛穴に落ちまくっている。アイシャドウはどんなに塗っても私の重たい目蓋が全てを収納してしまう。そのくせチークの存在感だけはすごすぎる。

鏡を見て思った。

なんだこれは。

七五三を迎えた3歳児の方がまだちゃんとしている。

死ぬほど恥ずかしい。

 

こんな顔で人前に出て良いのか。こんなものがおもてなしなのか。お客さんは旧正月かなんかだと勘違いするんじゃないのか。

 

自分の顔が不細工だということは分かっていたが、化粧ですらどうにも出来ないレベルだとは。

その日は多いに落ち込み、そのまま立ち直れず結局3日で辞めた。